第十三話

執筆者:楊海 

 

#コウ達サイド

戦車渡しを通り過ぎ、南下する。

すると所々大きいクレバスが口を開いたクライムカントリーに出る。

ユウ、コウ・カスガ、ポーン、アール達が下された任務はここの近くにある組織の救援....

要は援軍とか手助けとか傭兵とか....まあ、そんなもんだ。

 

「詳しい事はどんなことを?」

「この先の町を統括する組織の救援だ。バイアス・グラップラーの侵攻が近いそうだ。」

「組織の名前は?」

「オクタゴン。『八角形』と言う意味だ。」

「どんな組織ですか?」

「実際に見た事が無いからわからない。」

 

川に近いと熱風が冷やされ少しは涼しい風が吹いている。

戦車渡しを出て1時間少しが経ったのか。彼らの正面に警告標識が立っていた。

 

「えーっと....『警告 この先100m以降を無断で通行する者及びトレーダーの関係者、 その他我々に不利益であると判断された人間は殺傷性のある武器を用いて処分します -Octagon』」

「『オクタゴン』の標識。と言うことはゴールだな。」

 

ハッチを開いてポーンが戦車を降り、南を向く。荒涼とした大地の上にちょっとした町が見える。

ポーンが外の空気を吸い終わり、乗ろうとすると南西からバギーが警告灯を光らせこちらへと向かってきた。

よく見るとバギーとは行ってもシャーシ上部は骨組みだけでまるで月面車に似ている。

砲撃を打ち込んだらどうなるのだろう?

4人の近くにバギーが止まると2人の人間が銃を持って降りた。

 

「ここから先は私有地になります。通行されたい方は身分を証明する物の提示をお願いします。」

 

2人の人間はこの熱い地の上なのに真っ黒の服を着ていた。

左胸及び右肩にはオクタゴンのエンブレムが印刷されたワッペンを貼り付け、頭部はヘルメットを装備し、顔面を覆うようにスコープつきのゴーグルとガスマスクを装備している。

武装はSMGグレネードにショットガン、ラージスタンガン、手榴弾。それにバギーには対戦車ロケット及び弾薬箱が詰まれ、鎮圧するより粛清することの方が楽な装備をしている。

バギーそのものには戦闘力は無いが彼らが主砲やら機銃やらの代わりになるのは言うまでもない。

 

「失礼します。これ以上の通行をされる方ですか?」

「そうだが。」

「身分証明書の提示をお願いします。」

 

コウ達乗車していたハンターが戦車から降りる。

オクタゴンの二人はじっとスコープで見ている。

見透かされているような気分がして、あまり気分は良くない。

カードホルダからそれぞれの身分証明になりうる物を取り出す。

多くはハンターオフィスから発行された物だ。

 

「失礼します。」

 

軽く見ては持ち主に返しの繰り返しで一通り見終わると彼らはバギーからバーコードリーダーと安全ピンがついたプラスチック製のカードを取り出し、シールを貼るとバーコードを一枚一枚読み込む。

 

「これは通行許可証になります。再発行はしないので無くさないように注意してください。 それとこれは常に目に見える位置に身に付けてください。」

 

コウが身分証明証をホルダーに入れる際にポーンはコウの性別表示にFと書かれているのが見えた。

(女性だったのか....)

 

「手を開いて前に出していただくようお願いします。」

 

指示どおり、手を開くいて前に出す。

 

「失礼します。」

 

一人一人にキャップのような物を人差し指にかぶせ、すぐに外す。指紋を取ったのだろう。

 

「立ち入り禁止域には入らないようにお願いします。これで終了です。ありがとうございました。」

「あの、ハンターオフィスから派遣されてきたのですが....。」

「南西にポリステスと呼ばれる町があります。そこで任務についての質問をお願いします。」

 

オクタゴンの二人は車に乗ると発進する。

 

「何か....ぶっきらぼうな人たちだな....。」

「ユウ、あいつらは人じゃないぞ。」

 

コウの言葉にユウは驚きの表情を見せた。

 

「じゃあアレは?」

「人じゃないのは確かだ。指示どおり、ポリステスへ行くぞ。」

 

戦車に乗り込むと南西に向かって発進する。

 

 

 

#ソル付近某所(PM01:12)

蛍光灯が薄暗く白い光を発している。

白で満たされた部屋には十分な照明だ。

楊海は壁に背を向け、逆立ちしたまま静止している。

 

「.......。」

自分を売った人間を締め上げた結果、オクタゴンが絡んでいる事がわかった。

『オクタゴン』....確かに幾度か潜入した。潜入して金品を頂いて....『オクタゴン』と自分がこう言う関係になってしまった以上ケリをつけるべきだろうか。

ケリをつけるとしよう。どうやって?

そしてケリがついたとしよう。オクタゴンに守られた人間の命運はどうなる? 頭に血が上り始めた所で逆立ちを解いてうつ伏せになる。

 

「『オクタゴン』....厄介な事になったなぁ....。」

 

最も、こんな厄介事になったのは自分自身の責任であると楊海は知っている。 どうしようかどうなるのか。

このままにしておけば自分の体が砲弾で砕かれるのは目に見える。

ハンターオフィスに自首すべきだろうか。

しかしこのアイディアは思いつくだけで一瞬で捨てた。結果になんら意味が無いからだ。

オクタゴンを解散させる....思いつくだけで後が無い。

まず方法。潜入して頭を暗殺して....いや、金を盗んで経営破綻に陥らせる....ダメだ。

 

「オクタゴンとしてキャンセルを命令出してやればいいのだが....。」

 

これはいいアイディアと思ったがよく考えるとうまい考えとは言い難い。

ログに不自然な傷が残ってしまうし時間がかかる。

楊海は起き上がって呟いた。

 

「ハンターオフィスとオクタゴンを....ぶつけるのではなく、ハンターオフィスがオクタゴンを乗っ取ってもらう。そして、オクタゴンを解散させる。」

 

でもどうやって?

「ハンターオフィスの人間を呼び込みつつオクタゴンを解散させたらどうなる?」

 

これもいい案だと思ったが一つ問題があった。

ハンターオフィスがオクタゴンから賞金首の命令を引継ぐ可能性があるからだ。

未だかつてそんな事例が起きたためしが無い....けれど成功率が一番高く思えた。

要は自分が賞金首に揚げられていることを解除しつつ、オクタゴンの人間を無事に済ませば良い。

オクタゴンがいる限り何度も何度も賞金首に揚げられる。

それに、どちらにせよ自分が日の下を堂々と歩くには組織に潜入するしか道はない。

楊海は起き上がるとバッグの中身を整理し始めた。

 

「潜入して、ハンター達を呼び込んで、金を奪って経営破綻に陥らせて....。」

 

 

 

#イル・ミグラ民家

民家のシェルターで手当てを受けていた七誌が目を開く。

七誌が坂を転がりきってゴンチャロスが退いた後に救助された。

 

「....ん....?」

「おー、起きたか」

 

灰色で統一されたコンクリート壁の部屋。天井の蛍光灯が唯一の明かりだ。

人影と言えば正面にレオンがいる。

 

「ここは....死後の世界か?レオンも逝ったのか....」

「起きて早々そう言う不吉な話は止めろ」

「ならば生きているんだな。ならば今すぐに....!」

 

ベッドから飛び起きようとすると七誌が転がる落ちた。それをレオンは避ける。

 

「今すぐに....何をするつもりなんだ?」

「ゴンチャロスを!あいつをぶっ倒す!」

「悪いがゴンチャロスはもうとっ捕まったぞ」

「ハァ?」

 

七誌はベッドに腰をかけ、レオンが話の一部始終を語る。

 

「じゃあ誰なんだ?ゴンチャロスを倒したのは?」

「名乗りを出たらこの町では英雄だよ。賞金を町の再建費に当てた上、 強奪された品物を取り返したのだからな」

「そんな粋な人間がこの世界にいるのか....。」

 

七誌は鼻で笑う。

 

「昨日会ったイカサマ野郎とは大違いだ」

「昨日?ああ、二日ほど眠っていたな」

 

レオンが指を折りたたんで数える。

 

「ああ。二日だ。二日間意識不明で寝ていたぞ」

「二日....どおりで気分がいいワケだ」

「強がらなくてもいいぞ」

「コレが強がりに見えるかいっ....」

 

七誌は立ち上がってベッドに飛び乗り、跳びあがって一回転を決めようとしたらバランスを崩してベッドに崩れた。

 

「とりあえず、元気と」

「あたぼぅよ!」

「手足の痺れは感じないな?」

「感じないけど?」

「目は見えるな?」

「外へ行って黒い絨毯の数も数えれそうだよ」

 

レオンは考え込んだ。本当はもう一日休ませればいいのだが、まあこの調子だと聞かないだろう。

大きく息を吸って息を吐くと口を開く。

 

「ハンターオフィスから伝令が入った。この南にオクタゴンと呼ばれる組織がある。そこが今ハンターオフィスに救援を要請している。行くか?」

「稼げるなら」

「向こう次第だが、相当稼げるぞ」

「行くさ。借金は早く清算した方が気分がいいし」

 

七誌は立ち上がるとレオンはドアを開け、地上へと登る階段を歩き始めた....。

 



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