第九話執筆者:レオン・ハルト大尉&楊海
:ユゲ北東の荒野:
あれから数日、一行は旅の仲間にランとエイルを加えていた。
本人達が「なんか楽しそうだし♪」と、言ってきた結果である。
(もっとも、別に困ることや問題は無かった、一部の男性を除いて…)
その時、レオン搭乗の「ロー・アイアス」のBS通信システムに着信のコールが鳴った。
そのメッセージはコンソールの「非常通信」のランプを点灯させていた。
「ん、何だ!?」
レオンが通信回線を開くと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「こちらはオフィス治安部隊警備科所属、コウ・カスガ中尉!緊急事態に尽き、援護願います!」
レオンは驚きながら、皆に伝えた。
「おい皆!今俺の方で救助要請の通信を拾った!位置はここらか南へ五キロだ、行くぞ!」
一行が通信の発信地点に近づくと、一台の高機動戦闘車が走っているのが見えた。
それを見つけたポーンが言う。
「あれ…大尉、あれはまさかカスガ中尉のクルマですか!?」
「ああ…どうやらそうらしい…」
「何!?じゃあポーン、あれはお前達の知り合いか!?」
「知り合いも何も、ウチの部隊のオペレーターの人ですよ!」
驚く七誌に、ポーンが答える。
「仕方ねぇなぁ…よっしゃ、行くぜ!」
アールにラン、そしてエイルが先行する。
すると高機動戦闘車の後方に、巨大な陰が見えた。
その時、皆にカスガ中尉から入電が。
「皆さん、コイツはAAAクラス指名手配モンスター「スケルトン・ジェネラル」です!注意してください!」
「何!?コイツがだと!?」
七誌は、あまりに唐突な話に驚きを隠せなかったようだ。
「スケルトン・ジェネラル」は、体内から無数のアーミーゾンビやGIスケルトンを放出してきた。
一行は、損傷していた高機動戦闘車を離脱させ、得意の攻撃で敵を次々と倒していき・・・。
一時間も立つと、モンスターは全滅し、そこにはただの錆びた荒野が広がる事となった。
連絡を取り、高機動戦闘車の乗り手は、やはりカスガ中尉であった事が判明。
彼は本部から「レオン・ハルト大尉及ビ、ポーン二等兵ノ補助任務ヲ命ズル」との任務を受けて、単身ポブレ・オブレからやって来たのである。
こうして又、新たな仲間が加わる事となった…。
# イル・ミグラ、ハンターオフィス
日は錆びついた荒野に半分隠れている。空は赤銅色に染まり返っていた。
一行は『スケルトン・ジェネラル』を破り、賞金を受け取った。
それと同時に警備部門傭兵課に属しているレオン達にも吉報を。
「何があったのです?」
「昇級だよ....手続きしてるんでしばらく時間を潰していてくれ。」
ランが何となく、抜けた声で祝辞を送る。
「しんきゅうおめでとぉー。」
ニッとレオンは唇を歪めるとハンターオフィス奥に向かう。
「眠たい。」
突然にエイルが言うとランの手を引っ張って外へ出る。
「遠くへ行くなよ!」
「宿屋だから大丈夫!」
「宿屋って....知ってんでしょうかね?彼女たち。」
彗星はあっけに呟くように言う。
「大丈夫だ。あいつらに関わったら命が幾つあっても足らんわ。」
「そうですね。」
カスガの意見に彗星は納得した様子。
とりあえず、七誌は一人外へ出た。
(ちなみに美雪は戦車番。)
#同場所、酒場
「....フン。」
カウンターに不機嫌な面相で七誌はうつむく。
「『紅き狼』....『蒼き隼』....そして....。」
暫く奴らに対するオトシマエを考察しているとき、ギイとドアがきしむ音を立てつつ客が入ってきた。
その音に誘われるように視線だけを客に投げると....そこらにいる労働者と相違わない男だ。
『−−−−つまらない』
そう感じると視線を元に戻す。
七誌が視線を戻したと同時にドアが閉まった。
客は一歩二歩と歩くと辺りを見回す。
落ち着きが無いのか、この空気に慣れていないせいなのか。
七誌にとってその客についてはどうでも良い、無関係と決めていた。
「あら〜。今日も一日お疲れ様〜。」
バニーガールがそそくさと近寄ると彼のバッグに手を伸ばした。
「いや、いい。コレには構わないでくれ。」
彼女の手を遮るように男は右手を伸ばし、肩からバッグを落とすように置いて一番近くの席に座るなり一息ついた。
「何にするの〜?」
一呼吸置いて彼は答えた。
「みず。」
彼の注文に七誌は思わず吹き出し、笑いで肩が震えた。
「は〜い。水ですね♪」
彼女は付け尻尾をわざとらしく振りながらカウンターへと消えた。
彼についてもうちょっと観察してみる。
彼は上着のポケットに手を入れると煙草を取り出した。
銘柄は....『ピュアメタル』。
彼は煙草をくわえ、火をつけると同時にコップと水の入ったボトルが運ばれた。
緩やかに吸うと紫煙が唇から舞い出る。
ちらっと、男の視線が七誌の方に向けると七誌は慌てて視線を正面に戻し、物思いにふける。
5分ぐらい経つと男は煙草をもみ消し、立ち上がって七誌に近づいた。
「隣、いいか?」
「どうぞ。」
男は座るとタンブラーに水を汲み、飲む。
「うまそうな金の匂いが漂うね。いい金づるでも?」
「ああ....まあな....。」
「もっといい金づる知っているかい?」
「?」
男は輪ゴムで丸めて巻いた札束を七誌のグラスの前に立てた。
「どう?コイツ欲しくない?」
「ああ。勿論さ。」
チューン、修理、武器防具の購入で賞金がとんだ。
札には0の桁が5つ見える....これを目の前にちらつかされて放っておく奴はいるだろうか?
七誌は手を伸ばすと男は素早く札束を取り上げた。
「ただじゃやらんよ。そうだ、こいつを賭けてゲームをしてみようか。」
「ゲーム?」
「コインの裏表当て。いいかい?」
「いいぜ。で、俺は何をかければいい?」
「お大尽でいいかい?」
「割に合わないがいいのか?」
「ああ。勿論さ。」
「乗った!」
「決まりだね。」
男はコインを取り出した。
「裏?表?」
「裏。」
「よーし。僕は表だ。」
男はコインを親指に乗せ弾く。
息を止め、七誌を見つめた。七誌も、男を見つめる。
「審判の時来る....。」
ゆっくりと手をどけると....コインの表面が現れた。
「よっしゃ!おーい皆!今日はこの人のおごりだってさ!気が済むまで飲んでよ!」
酒場にざわめきが起こる。
酒場にはざっと10人程客がいる。
皆が皆、この上ない幸福な顔をし、遠慮なく酒を頼む。
ただ一人、七誌を除いては。
男は水を一息で飲み、札束をポケットに入れ、荷物を担いで外に出る
「こいつは会計の足しにしてくれ。じゃあね。ごっそさん。」
男はコインを七誌に向け弾いた。
コインを受け取ると七誌の顔はこの上ない不幸な顔から鬼の形相に変わる。
それもそのはず。両面とも同じ面がプリントされていたのだから。
「あの野郎!」
叫ぶ七誌を尻目にいかさま男はもう店から消えていた。
七誌は男を追おうと外へ出ようとした瞬間弾丸がかすめる。
「お客さん!金を払ってから外に出てくださいよ!」
マスターの声が聞こえた。マスターは手にSMGグレネードを手にしている。
七誌は店の出入り口付近でへたれこみ、笑う。
「覚えとけあの野郎....。」
そうだろう、そうだろう。
男が呼んだかしらないが、更に客が詰め掛けたのだから....。