第三話

執筆者:震電J7

 

 ゴゴゴゴゴゴ・・・・・。

 

先頭を走るレオンのエイブラムス『ロー・アイアス』が勢い良く土を跳ねる。

そしてシンデンの『ストライカー』、七誌の『ハスニール・エイト』が続く。

装甲値の低いストライカーを守るような形で組まれた隊列であった。

 

「なぁ、レオン。これから何所にいくんだ?」

 

七誌が無線でレオンに尋ねる。

 

「オ−ドリーだ。ここからならオ−ドリーが一番近いんだ。」

「でも、あそこには巨大な砲台があるハズだが・・・。」

 

今度はシンデンがレオンに話す。

 

「大丈夫、リモコンで機能を停止できる。何せ警備隊が設置した砲台だからね。」

 

そう言ってレオンがリモコンを操作し、砲台の機能を一時停止した。

 

「なるほど、これなら安心して通れるな。」

 

砲台の下を通り、湖の外周を回り込む。

 

「俺が来て正解だっただろ?」

「そうだな。もしかしたら砲台を破壊しなければならない所だった・・・。」

 

シンデンが納得した様に頷く。

 

「二人とも、ノンキに話してる暇は無い様だぜ、敵さんのお出まし、だ!」

 

 ズドーン!!

 

ハスニール・エイトが225mmヒュドラを敵の中心に叩き込む。

 

「85mm自走砲とトレ−ダー殺しか、大した敵じゃあ無いが、なんて数だ・・・。」

 

見ただけでも20台近くがひしめいていた。

 

「こういう時は・・・。」

 

 ドン!!シュルルルル・・・、バッ!ドドドドドドッ!!

シンデンが特殊砲弾の炸裂弾を発射した。一撃で次々と敵戦車が破壊されていく。

 

「よし、俺も!」

 

 バシューーーーーッ!!ボワッ!!

ロー・アイアスに搭載されたサンバーンXXが強烈な閃光を放った。

 

「オラオラァ!!」

 

 ババババババ!!バリバリバリ!!

七誌は副砲の緋牡丹バルカンとサンダーストームを打ちまくる。

 

10分後、20台以上いた戦車郡はそのほとんどを蹴散らされていた。

 

「ふう・・・、なんとか片付いたな。」

 

七誌がストライカーの破損した22mmバルカンを直しながら話す。

 

「なぜかこの辺りは敵が多い・・・。だから砲台を設置したんだ。」

 

レオンが七誌に答える。

 

「この辺に何かあるんだろうか・・・。」

 

シンデンが砲台の方向を眺めながら言った。

 

レオン・七誌・シンデンの三人はその後も戦闘を繰り返し、何とか次の町、オ−ドリーにたどり着いた。

三人は宿に向かい、部屋を取る。そして、汗を流した後、酒場へと向かった。

 

「ふえ〜、さすがにザコでも数が多いと疲れるな〜。」

 

そう言って、七誌が椅子にドカッと座る。

「ああ。何だか最近、モンスターも強くなってるが気する・・・。」

「それは私も気になっていたんだ・・・。」

 

レオン、シンデンも椅子に腰掛ける。

 

「何だか知らんが、かかって来たら叩くだけさ。親父、ごくらくパンチを頼む!!」

 

七誌が店のマスターに注文する。その姿にレオンとシンデンは笑みを漏らした。

 

三人は酒場を出て、戦車装備の店がある建物に向かった。

ここには三人の戦車装備を上回る装備は無い。

タイルパックなどの予備装甲、特殊砲弾などの補充が目的であった。

 

「二人はどんな特殊砲弾を積んでるんだ?」

 

レオンがシンデンと七誌に尋ねる。

 

「俺はホローチャ−ジ、爆裂弾、ナパーム弾。他に積んでるぜ。」

「相変わらず爆発系の好きな奴だ・・・。シンデンは?」

 

レオンは振り向いてシンデンに尋ねる。

 

「私はホローチャ−ジ、パニック弾、爆裂弾、麻痺ガス弾、徹甲弾、セメント弾、ナパーム弾、冷凍弾、・・・それから・・・」

「・・・。アンタは砲弾屋か・・・。」

 

レオンは溜め息を漏らした。

 

 

オ−ドリーを出た三人は、一路、ロッコの町へと向かう。

 

「レオン、ロッコには確か、シャシーの改造屋が居たな?」

 

シンデンがレオンに尋ねる。

 

「ああ、居るよ。何か改造でも・・・、うわっ!!」

 

ゴゴゴゴゴ・・・・・!

その時、突然地面が揺れ出した。

 

「じ、地震だ!!」

 

三人は戦車を止め、揺れが止むのを待った。

しばらくすると揺れは収まり、三人は安堵の息をつく。

 

「ふう、驚いたぜ・・・。」

 

七誌が呟いた。

 

「地震ぐらいで驚くことは無い。」

「ワゥ!」

 

突然、三人の後ろから声が掛けられた。

三人が振り返ると、そこには一匹の犬を連れ、真っ黒な戦車に乗った青年がいた。

突然現れた青年は、戦車を降り、七誌達の前に立つ。

 

「この辺りで『205mmひ牡丹』の話を聞いたことは無いか・・・?」

 

唐突(とうとつ)に青年が尋ねてくる。

 

「すまないが、その前に聞きたい。君は誰だい?」

 

シンデンが落ち着いた声で話す。

 

「・・・ユウ・・・。そう呼ばれている。コイツは美雪。僕の、友達・・・。」

「ユウ・・・?どこかで聞いた名だ・・・。」

 

名前を聞き、レオンが何かを思い出そうとしていた。

(ユウ・・・、バイオニック・ドッグ・・・、黒いウルフ型戦車・・・。)

しばらくして、何かを思い出したレオンが顔をあげる。

 

「『漆黒の悪魔』だ!そうだ、思い出した!!」

 

シンデン達は、突然現れた「ユウ」と名乗る青年と共にロッコへと向かう。

そして、ロッコの酒場で詳しい話を聞く事にした。

 

「まずは自己紹介だ。私はシンデン、ハンターだ。よろしく。」

「俺は七誌ハンター。ハンターだが、メカも出来る。」

「ポブレ・オブレ治安部隊所属、レオン・ハルトだ。君の事はハンターオフィスからの情報で聞いた事があるよ。よろしく。」

 

三人がそれぞれに自己紹介する。

 

「さっきも言ったが、僕はユウ。コイツは美雪・・・。」

 

ユウは美雪の喉元を撫でながら言った。

 

「それじゃあ、君の質問から答えよう。我々の持つ情報の中には205mmひ牡丹の情報は無い。それが答えだよ、すまない・・・。」

 

そう言ってシンデンが頭を下げる。

 

「俺もハンターオフィスのホストコンピュータに問い合わせてみたが、 205mmひ牡丹の情報は無かった。」

 

レオンも『お手上げ』であった。

 

「そうか・・・、すまなかった。」

 

そう言って、ユウが席を立ち上がる。

 

「まぁ待てよ。『ひ牡丹シリーズ』と言やぁ、”幻の装備”とまで言われるモンだ。ひ牡丹バルカンでもかなり苦労したんだ。205mmひ牡丹なんて、そう簡単に見付かる訳ないと思うぜ?」

 

そう言って、七誌はユウを再び席に座らせる。

 

「何が言いたい・・・?」

 

ユウが少し怒った様に言い返した。

 

「つまりだ、君も私達と共に来ないか、と言ってるんだよ。君一人で探すのは大変だろうし、我々も出来るだけ仲間が欲しい。互いの利害が一致しているから、悪い案では無いと思うが・・・?」

 

シンデンが七誌の言葉に付け加えた。

 

『もし、我々と来る気が有るなら、明日の朝、この酒場の建物の前で待っていてくれ。今日一日、君がどうするかを考えて欲しい。』

 

昨日、そう言い残して、シンデン達は酒場を後にした。三人は酒場の上の宿に泊まり、一夜を明かす。

 

「シンデン、ユウは・・・、来るだろうか・・・?」

 

起き掛け、レオンがシンデンに尋ねる。

 

「さぁ、な。その判断はユウに任せてある。彼が来てくれるのならかなりの戦力アップになるが・・・。」

「ま、この階段降りりゃ、解かるって。」

 

七誌がスタスタと階段を降りていく。そして二人もそれに続いた。

 

「・・・・・・。なっ?簡単に答えが出ただろ♪」

「・・・、ああ、そうだな!」

 

そこには一台の黒い戦車が停まっていた。愛犬・美雪と共に・・・。

 



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