「それじゃ、ワシらはマドに引っ越すとするよ。この村には他にも修理屋がおるからのう。」
翌朝、ナイル爺さんは孫達を連れ、定期便でマドへと旅立っていった。 村で情報を集めた七誌とシンデンは、リオドラで一晩を明かし、ネギの村を経由してポブレ・オブレの町へと向かった。 ポブレ・オブレは治安も良く、このあたりでも比較的大きな町である。
「はぁ〜、着いたな。」 「ああ。」
戦車から身を乗り出し、七誌とシンデンが伸びをした。
「そこの二人、済まないが身分証明を見せてくれないか?」
その時、二人の後ろから声を掛ける者がいた。
「えっ!この声は・・・。」
七誌が驚いて振り返る。それにつられ、シンデンも振り返った。
「や、やっぱりレオン・ハルトか!!」 「な、七誌!?」
七誌が戦車から飛び降り、その青年の肩をバンバンと叩く。
「え、じゃあ彼がさっき言っていたレオン・ハルト君か・・・!」 「ああ、コイツの事さ。」
久しぶりの友人との再会に七誌は喜ぶ。
「イテテテテッ!ちょっとは力加減しろ!お前は馬鹿力なんだから!」 「はっはっはっはっはっ・・・!」
七誌が大笑いする。シンデンもその様子を楽しそうに見ていた。 ポブレ・オブレの満タンサービスで補給を済ませ、二人はレオンと共に町の酒場に向かった。
「ぷは〜、うめ〜な〜!」 「ああ、久しぶりだよ酒を飲むのは・・・。」
バックドロップをいっきに煽る七誌の横でレオンが、少しずつ酒を口に運ぶ。
「そういえば自己紹介がまだだったね。私はシンデン。世界を回って いるハンターだ。」 「あ、俺はレオン・ハルト。”レオン”と呼んで下さい。この町で治安維持警備の仕事をしています。階級は大尉。」
レオンは丁寧に答える。
「はは・・・。そんなに畏(かしこ)まらないでくれ。「大尉」、と言うことは中隊長クラスだな。」
シンデンがレオンの階級持ちらしい喋り方に笑顔を見せる。
「確かに中隊長ですが・・・、なぜ役職までわかったんです?」
レオンが不思議そうに尋ねる。
「私も元は警備隊にいたんだ。最終階級は君と同じ大尉。」 「へ〜、あんたも警備隊か〜・・・。」
バックドロップを酒瓶ごと煽り、七誌が呟く。
「そうでしたか・・・。」 「だからそんなに固くならず話してくれ。なんか背筋がかゆくなる・・・。」
シンデンは背中をこりこりとかく。そして酒場に明るい笑い声が響いた。 翌朝、シンデンと七誌はポブレ・オブレを離れる事をレオンに告げた。
「もう行くのか、二人とも・・・。」
部下を一人連れたレオンが二人に話す。
「ああ、早くグラップラーも叩いておきたいからね。」 「俺もシンデンに付いて行くことにしたしな。」
シンデンは『ストライカー』に、七誌は『ハスニール・エイト』に乗り込む。
「そうか、もう少しゆっくりしていると思ったんだが・・・。」
そう言って、レオンは部下に敬礼をする。そしてレオンは車庫の奥に消えていった。
「?」
二人が戦車から頭を出し、首をかしげた時、奥からエンジンの始動音が響いた。
「!?」
現れたのは黒と灰の迷彩塗装が施された警備隊のエイブラムスであった。
「お、おい!レオン、何をする気だ!?」
七誌が奥から現れた戦車に叫ぶ。
「何って・・・、お前たちに付いていくんだよ。」 「付いて来るって、君の職務は・・・?。」
シンデンが戦車から頭を出したレオンに尋ねる。
「大丈夫。指令官の許可は取ってある。彼が俺の変わりに職務につく。」
レオンの部下が二人に敬礼した。
「グラップラーを叩きたいのは警備隊も同じさ。だから俺はポブレ・オブレの警備隊代表としてお前たちと共にグラップラ−を叩く!」
そう言ってレオンが笑った。
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